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2022年10月25日

住職の言いたい放題(62)『不公正な公平』

こんにちは。住職の斉藤隆雄です。

2020年度から新しく導入予定の大学入学共通テストの英語民間試験が直前で延期となりました。延期の理由は「受験生の家庭の経済性や地域性による不公平さを問題視したため」ということでした。直前の延期で受験準備をしてきた高校2年生や試験の請負業者は大混乱でした。
 
数学者の藤原正彦お茶の水女子大学名誉教授は、英国のケンブリッジ大学入学の合否判定は同等ではないといいます。格式や伝統のある全寮制のエリート私立中学・高校は学費が高額で裕福で優秀な子弟しか入学できません。

高額なだけに運動や学習する環境が素晴らしく、理系教師の大半が博士号を保有しています。こんな恵まれた環境で6年間過ごした生徒と田舎の公立高校出身者が、類似した入試成績だった場合は公立高校出身者が合格するというのです。教育環境がまるで違うものは区別するのが当然と考えるのがケンブリッジの公平だそうです。日本の国立大学では総合点で機械的に合否を決定します。
 
日本の入試の公平は「主観を混入させない」であり、ケンブリッジは「主観を入れて評価する」です。両者の公平は相当に異なります。
 
作家の下川裕治さんのバンコクに関する著書でタクシーのことが書かれています。以前バンコクのタクシー料金は運転手と客との交渉で料金が決まりました。相場の分からない観光客は不利で、地元の客よりかなり高いタクシー代を払っていました。

しかしメーター制になったおかげで交渉が不要になり、さらに料金が安くなりとても良かったと思っています。しかし現地の人は当初メーター制導入には反対でした。その理由はメーター制になれば遠回りされるからというのです。乗る前に料金を決めていたほうが安心してタクシーに乗れるというのです。観光客と地元の利用者では公平が異なりました。
 
阿弥陀さまは公平です。「救いたまえと念じてナムアミダブツと称えれば誰でも極楽浄土に救って下さいます」