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2026年8月1日

住職の言いたい放題(82)『介護される側の私』(83)『貧乏くさい世の中になったものだ』

住職の言いたい放題(82)
「介護される側の私」

葉真中顕さんの小説『ロスト・ケア』が、2023年に映画化されました。訪問介護士役を松山ケンイチさん、検事役を長澤まさみさんが演じ、介護殺人をテーマにした作品です。

検事・大友秀美(長澤まさみ)は、訪問介護センターで献身的に働く介護士・斯波宗典(しば むねのり/松山ケンイチ)の言動に不審を抱きます。彼が非番の日に限って、この訪問介護施設に登録している高齢者が亡くなっているのです。亡くなった方々はいずれも障がいや認知症のある高齢者であったため、十分な検死が行われないまま火葬されていました。

やがて大友は、斯波が関与したとみられる「安楽死」が42件にも及ぶことを突き止めます。そして彼女は斯波と対峙し、「なぜこれほど多くの人を殺したのか」と問い詰めます。

しかし、この問いに対する斯波の答えは衝撃的なものでした。彼は「これは殺人ではありません。私は42人を救いました」と語ります。訪問介護で接する高齢者の中には、認知症などの影響で人格が大きく変わり、家族に暴力を振るったり、徘徊によって家庭生活が成り立たなくなったりする方もいます。そのような、人間としての尊厳を失いかけている人をこの世から送り出すことは、「本人にとっての救い」であり、介護する家族にとっても、家族の面影を残しているうちに看取ることで、介護・子育て・仕事に追われる苦しみから解放することになり、家族を「救った」のだと主張するのです。

被害者の遺族の思いも複雑です。厳罰を望む人もいれば、逆に減刑を望む人もいます。この作品は、現在の高齢化社会や貧富の格差といった、日本が抱えるさまざまな問題を私たちに問いかけています。

2040年には、団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者人口は全人口の約35%に達するといわれています。高齢化は今後さらに加速していくでしょう。

私も、そう遠くない将来には介護される側になります。その時には、阿弥陀さまに「そろそろお迎えをお願いいたします」と、静かに手を合わせることになるのかもしれません。

住職の言いたい放題(83)
「貧乏くさい世の中になったものだ」

「貧乏」と「貧乏くささ」は違います。「貧乏」は経済状態を表す言葉であり、「貧乏くささ」は心の貧しさを表す言葉です。

生活が苦しいというのが貧乏です。戦後は多くの人が貧しい生活を送っていました。しかし、貧乏は決して恥ずかしいことではありません。少しでも生活を楽にし、豊かになろうと、人々は懸命に努力を重ねてきました。

高度経済成長を経て、1970年代前半には国民の約9割が自分の生活水準を「中」と答えるようになりました。そして1979年の『国民生活白書』で、その状況は「一億総中流」として定着したと宣言され、この言葉が広く使われるようになりました。

こうして貧しさからの脱却が実現し、日本は急速な経済成長を遂げます。

今から37年前の平成元年(1989年)、大納会の日経平均株価は3万8,915円87銭の史上最高値を記録しました。また、企業の世界時価総額ランキングでは、1位がNTT、2位が日本興業銀行、3位が住友銀行となり、上位を日本企業が独占しました。さらに、ランキング50社のうち32社を日本企業が占め、日本経済が絶好調だった時代です。多くの人が、日本は豊かな国になったと実感していました。

しかし、その後バブル経済は崩壊し、日本経済は長い低迷期に入りました。現在では、企業の世界時価総額ランキング50社に入る日本企業はトヨタ自動車のみで、順位も49位にとどまっています。また、名目GDPでも中国やドイツに抜かれて世界第4位となり、一人当たりGDPではシンガポール、台湾、韓国にも及ばず、日本は38位となっています。

さて、現在、福岡県議会では高額な海外視察が問題となっています。渦中の県議会議長は記者会見で、「海外活動」あるいは「海外視察」と言うべきところを、「海外旅行」と言い間違えてしまいました。

心理学者フロイトは、「言い間違いには、その人の無意識の欲望が表れる」と述べています。議長は研修ではなく、心のどこかで「旅行」と思っていたことを、思わず口にしてしまったのかもしれません。

問題は、その海外旅行とも受け取られかねない費用の原資が、国民の税金であるということです。

思想家・内田樹氏は、「税金を集め、その使い道を決める人たちが、公金を私財のように扱うことを本務としているかのような姿を表す言葉として、『貧乏くさい』ほど適切なものはない」と述べています。

経済的には豊かな立場にある権力者が、心の貧しさを感じさせる振る舞いを見せる――。それこそが「貧乏くささ」なのでしょう。

富裕層に属する権力者が「貧乏くさい」と言われる時代とは、何とも寂しい世の中になったものです。