
2025年4月11日
住職の言いたい放題(76)『人生最後のお仕事 』
こんにちは。住職の斉藤隆雄です。
人生最後にしておきたいお仕事は、家族や有縁の方々に対しての感謝です。今年の1月11日のTBSテレビ「報道特集」で「震災から一年 輪島市遺族の悲しみ」が放送されました。
昨年、元日の大地震で、一人暮らしの大家寿美恵さん(88歳)は自宅が倒壊して一階部分に閉じこめられました。寒さと全身の痛みで自分ではどうすることもできませんでした。必死にスマホで娘に救助を求めました。結果的には近くにいた娘婿によって瓦礫の中から救出されましたが、体の痛みで動けない状態でした。この日は病院や救急車による治療を受けられず、一晩中避難所で氷点下の中、震えながら過ごしました。幸いにも翌日入院することができました。直後は体調が少々回復しましたが、残念ながら2か月後の3月2日に亡くなられました。
亡くなられる二日前にベッドの中で『ありがとう いうて みんなに』と枕元の紙にマジックで感謝の気持ちを書かれました。娘の智子さんはこのメッセージが書かれた紙を今でも大切に保存しています。『自分が苦しいのに、ありがとうと書いた母を想うと涙が出ます』とおっしゃっています。
私も可能ならば感謝を伝えて最期を迎えたいと願いますが、無常の世の中です。どのような最期を迎え、ちゃんと感謝できるかどうかはわかりません。
法然上人は『人の死の縁はかねて思うにも叶い候らわず』といわれます
人が死に至る因縁はさまざまで、つねづね思っている通りに、なかなかなりにくいものです。最近までのコロナ禍では、感謝の気持ちを伝えたくても、面会すら思い通りにならないという時期もありました。
元気な内から家族には感謝の気持ちをさりげなく伝えておいた方がいいのですね。
そうなると少し照れてしまいます。難しい…