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2024年10月3日

住職の言いたい放題(71)『後悔しない生き方・死に方』

こんにちは。住職の斉藤隆雄です。

仏説無量寿経には『自分がなすべきことに全力で取り組んだ時、結果がどうであれ後悔しない』と説かれます。信念をもって、自分で決めて実践することが後悔しない生き方です。しかし現実は、人の意見に流されて、失敗して後悔する、という経験は誰でもあると思います。後悔しない生き方、死に方を目指して、老病死とどのように向かい合えばいいのでしょうか。

自分の死生観と自分の信念で決めることが大切です。
 
令和3年に81歳でご逝去された医師の中村仁一先生の信念をご紹介いたします。京都大学医学部卒業後、医師として過ごされ、2000年から老人ホームに医師として勤務します。ここで多くの高齢者の看取りをし、その体験から『自然死のすすめ・大往生したけりゃ医療にかかわるな』を出版し大ヒットします。

自然死は安らかな穏やかな死を迎えることができるという結論です。
中村先生ご自身も、令和2年6月に勤務先の老人ホームに向かう上りの坂道で息苦しくなるという自覚症状がありました。9月にホームに来たレントゲン技師さんにレントゲン撮影をしてもらうと、肺腺ガンでステージ4が判明しました。

すぐに老人ホームを退職し、「がんは完全放置すれば痛まない」という確信から、入院せずに在宅療養を選びました。訪問診療医からはがんの転移をエコー検査や血液検査で確認しようと提案されましたが、仮に転移がわかっても何の益もないので断ります。

咳止めや痰を切る薬や止血剤も飲まず、トイレも介護ベッドの高さを上げてベッドにもたれて自分が尿瓶で済ませます。家族に用を頼んだ時は「ありがとう、すまんな」と礼を言い、亡くなる二日前は寿司を、当日の朝はトンカツを食べて、最後、呼吸は少し苦しそうでしたが、穏やかに亡くなられました。

「自然に死にゆく姿を子供たちに見せる」という最後の役目も果たしました。