2023年8月1日
住職の言いたい放題(68)『後世を決定して現世を生ききる』
こんにちは。住職の斉藤隆雄です。
漫画『課長 島耕作』の作者弘兼憲史さんが書かれた「70歳からのゆうゆう人生」-老春時代を愉快に生きるーを読みました。弘兼憲史さんは昭和22年生まれですから私より6歳年上です。
この本の中で弘兼さんは『死は誰にでも訪れます。だからこそ、死を恐れる必要はありません。形式的な宗教儀式にとらわれず、死に対してフレキシブルに考えたいと私は思います。』と言われます。
フレキシブルという言葉を調べました。柔軟性・順応性・融通とありました。死生観は人それぞれの考え方です。死を恐れず柔軟に対応するというのが弘兼さんの死生観です。
お念仏の信仰は、初めに来世の行き先を極楽浄土に定めます。まさにフレキシブルの反対です。調べましたらインフレキシブルというのだそうです。
毎年5月に金沢からお説教でお越しいただく谷崎隆光先生は『後世(ごせ)を決定(けつじょう)して現世を生ききる』のがお念仏の信仰と説かれます。
行く先が決まっているから、そこが苦のない楽のみの世界だから、先立って行った大切な方々と再会できるから、光り輝く来世があるから、中々思い通りにならない現世で安らかな日暮らしができるという死生観です。
ここで大切なことは、お念仏や極楽浄土を学ぶことも必要です。しかし学んだ知識だけでは安らかに生きていくための強い力にはなりません。
毎日のお念仏の実践で信心を深めることが大切です。
法然上人は、来世の往生を疑うことなく、日々お念仏に励むようにご遺言されています。
『ただ往生極楽のためには 南無阿弥陀佛と申して うたがいなく往生するぞとおもいとりて申す外(ほか)には別の仔細候(しさいそうら)わず』(御遺訓 一枚起請文)