2018年5月25日
住職の言いたい放題⑱「下り坂を楽しむ」
こんにちは。住職の斉藤隆雄です。
「定年」や「老後」に関する本を読んでみると、幸福に生きるために人間関係や趣味や健康を積極的・前向きな生き方をしましょう。という趣旨で書かれています。
しかし諸行無常の世の中で、この先ずっと積極的に前向きに生きることは絶対にできないという、自覚も必要です。
五木寛之さんの「孤独のすすめ」を読みました。五木寛之さんは前向きにという呪縛を捨てなさいというのです。積極的に他人とコミュニケーションをとる。カラオケ会や団体旅行に行くなど、レクリエーションを生活に取り入れる。なるべく体を動かす。好奇心を持つというような考え方には五木寛之さんは懐疑的です。人生には、山にたとえれば登る時期と下る時期があります。下りの景色は来た道とは違って素晴らしい景色だというのです。『人は年をとると、孤独という自由を手に入れる』『孤独を楽しむ人生は決して捨てたものではありません。それどころか、つきせぬ喜びを発見する時間でもあるのです。』とこれから私たちが体験しなくてはならない孤独を前向きに受け取っています。
そして五木寛之さんは「死生観の確立」を主張します。どのように生きていくかと同時に、どのように逝くかを託すことの出来る宗教を見つけ、信仰を持ち、漠然とした不安を拭(ぬぐ)うことが大切だというのです。
多くの高齢者は、死に対して「漠然とした不安」を持っていると思います。そして死に直面している高齢者は「恐怖感」をもっている方もたくさんいらっしゃると思います。
不安や恐怖に対抗するためには、正しく宗教を学び、その教えを実践して、学んで得た知識がしっかりと信仰心となっていくことが大切です。
死生観を確立して不安感や恐怖心から解放されれば、将来に光り輝く希望を持つことができ、日々の下り坂の人生を心安らかに過ごしていけます。
仏説阿弥陀経には『極楽には何の苦しみもなく、楽のみを受けるので極楽と名づけた』と説かれています。素晴らしい未来が待っています。