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2017年6月7日

住職の言いたい放題⑫「天国には行きません」

こんにちは。住職の斉藤隆雄です。
 
テレビのニュースも新聞の記事も、人の死について触れる時には「天国に行った」「天国で見守っている」というように「天国」という表現が使われます。「天国」はキリスト教の固有名詞であり、普通名詞ではありません。何故マスコミは「天国」を使うのか。

中村圭志さんの「教養としての仏教入門」によると「日本人にとっての死後の世界は、かなり多様である。神道では死者は黄泉の国に行く。(中略)仏教では輪廻転生するのが大前提であるが、浄土宗や浄土真宗などでは、極楽浄土と呼ばれるユートピアに行くことを願う。いわゆる往生である。このようにビジョンが多様であるならば、マスコミとしては、死後について一般的に当り障りなく語るにはどうしたらいいか迷ってしまうだろう。テレビ番組で『極楽に行った〇〇さん』と言ってしまうと、はっきりと浄土系の宗派に肩入れしたことになる。宗教的に無党派でありたいマスコミとしては、それはまずい。だから西洋由来の天国が引っ張り出されるのだ。天国ならキリスト教に肩入れしたことになるのではないか?という心配は無用である。日本においてキリスト教は圧倒的に少数派だからだ」多くの日本人がキリスト教と縁遠いから、マスコミは「天国」を気楽に使うことができるというのです。
 
マスコミが「天国」という言葉を多用することで、「天国」を使用する一般の方々が、最近は多くいらっしゃいます。若い方だけでなく、ご年配の方も「天国」を使われる方が大半です。

しかし仏教で天国といえば、六道の中の天界を意味します。天界は残念ながら輪廻転生の苦しみの世界のひとつです。ですから仏式の葬儀や告別式で弔辞を読まれたり、弔電をお送りする時に、「天国」を使用するのは、故人に対してもご遺族に対してもある意味大変失礼に当たります。堂々と「浄土」とか「極楽」と表現しましょう。