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2021年12月12日

住職の言いたい放題(55)続『お墓に戒名を刻む』

こんにちは。住職の斉藤隆雄です。

西念寺歴代住職の墓石に私の戒名(法名)を刻むにあたり、『愚生』(ぐしょう)の二文字を追加しました。今まで多くの方々に戒名を授与しましたが、『愚』という文字をお付けしたことはありません。やはり戒名に『愚』の文字があったら、いい気持ちはしないと思います。

しかし今回は自分の戒名ですから、私自身はもちろん納得していますし、これにはちゃんと二つの意味があります。
 
一つ目は、私の人生を振り返えれば「お恥ずかしい人生でした」「愚かでお粗末な人生でした」という意味での『愚生』です。
二つ目は、お念仏の信仰においては、『愚』は無知・愚か者という意味ではありません。自らを『愚』といただく事がとても大切です。比叡山で「智慧第一の法然房」といわれた浄土宗宗祖法然上人(ほうねんしょうにん)はご自身を「愚痴の法然房」といわれました。法然上人のお師匠様の中国唐の善導大師もご自身を「煩悩を取り除くことができない凡夫」と言われました。

覚りを開いた佛さまからみれば、すべての人が愚鈍の凡夫です。ですから自分の力では絶対に悟りの境地に到達することなんてできない私であるという受け取りが大切です。お念仏信仰のスタートは「まずわが身が愚鈍の凡夫であると信じること」と法然上人はお示しです。他にも「お念仏の修行では、自分を『愚鈍』の身であると捉えなさい」「浄土門の修行は愚痴の身でお念仏をお称えして極楽に生まれることです」「お念仏のみ教えを聞いて、素直に愚鈍念仏を続けるお方こそ、往生できるお人柄です」等々お示しです。

愚鈍念仏を生涯お称えして往生を願うという意味の『愚と生』です。
私はこの二文字がとても気に入っています。